いま中国で急速に広がる「習近平への憎悪」…そのウラで起きている春節大移動の「異変」
中国のシリコンバレーであふれている「失業者の群れ」
中国の労働者から上がる不満
中国で1月26日、春節(旧正月)休暇に伴って交通需要が高まる「春運」が始まった。
だが、ここでも中国経済の苦境が暗い影を投げかけている。
期間中の鉄道や飛行機といった公共交通機関の利用は前年に
比べて14%減少する見通しだ。
高速道路の通行が無料になるため、節約意識を強める多くの中国人が
自家用車での移動を選択しているからだ。
節約志向の背景にあるのは雇用不安だ。
1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2となり、
4ヵ月連続で好・不調の境目である50を割り込んだ。
需要不足で新規受注が伸び悩み、先行き不安を抱く企業は採用拡大などに慎重だ。
新規雇用は新型コロナの流行前を下回っている。
就職難が深刻な若年層(16~24歳)の間では、公務員人気がうなぎ上りだ。
2017年以降、国家公務員試験の受験者数は約70%増加、昨年は約260万人に達した。
合格率は極めて低くなっており、何度も受験する人が増えているという。
隋や唐の時代から1912年に清朝が滅ぶまでつづいた帝政時代の官吏登用試験の
「科挙」は、合格率の低い難関試験として知られたが、雇用状況を見る限り、
中国経済は前近代に逆戻りした感がある。
中国のシリコンバレーであふれ出した「失業者」
雇用不安を抱くのは、大学卒業生だけではない。
30歳代の就業者にも解雇のリスクが高まっており、彼らの前には再就職が難しくなる
「35歳の壁」が立ちはだっている(1月18日付日本経済新聞)。
中国の人材派遣企業の調査によれば、働き手の85%が「35歳の壁はある」と回答している。
業績が悪化した企業にとって、子育てなどの支出が増えやすい30歳代後半の
人材をリストラして、低賃金の20歳代を新規に雇用することが人件費を
圧縮するための手っ取り早い方策だ。
特に、インターネットや金融、自動車などの分野で働く人の間で危機意識が強い。
日本でもかつて「転職は35歳が限界だ」と指摘されていたが、
中国も同じ状況になってしまったようだ。
中国メディアは「『中国のシリコンバレー』と呼ばれた深圳の路上に失業者の
群れができている」「多くの元企業幹部が解雇され、家族には出勤したふりを
して図書館で日中を過ごしている」などと報じている。
1990年代後半に日本が経験した大量リストラを彷彿とさせる光景だ。
「首切り」という最悪の事態を免れたとしても、
「賃下げ」には抗うことはできない。
さらに後編記事『民衆を威圧せよ…!苦境にあえぐ中国人民の暴動に備え、
習近平が密かに新設した「軍事組織」』では、雇用不安がひろがる中国の
現状を詳しくお伝えしていこう。