東京大学、神戸製鋼所と共同研究:次世代強誘電性メモリの動作を実証
東京大ら、3次元集積可能なメモリデバイスを開発!!
東京大学は、奈良先端科学技術大学院大学神戸製鋼所及び神戸製鋼所、
コベルコ科研と共同で、Snを添加したIGZO材料(IGZTO)を用いた
3次元集積メモリデバイスを開発、動作実証に成功した。
主な特徴と成果
高速動作
メモリデバイスはナノ秒単位の動作速度を達成し、AIや機械学習など
大量のデータ処理を必要とする用途に最適化されています。
高効率性と信頼性
Snを添加したIGZOトランジスタは従来の材料よりも高い移動度を実現し、
エネルギー効率が向上しました。
また、集積回路に直接形成可能なため、実装の自由度も高いです。
3次元集積技術
トランジスタとキャパシタを垂直方向に積層する技術を利用しており、
ムーアの法則の限界を克服し、より高密度なメモリが可能となっています。
応用の広がり
IoTデバイスやデータセンターなど、幅広い分野での応用が期待されます。
今後はさらに信頼性を向上させるための研究が進められる予定です。
この研究は、科学技術振興機構(JST)の支援を受け、エネルギー効率の
高い深層学習システムの基盤技術としての役割を目指しています。
プロセッサの配線層上に大容量メモリを混載することが可能となる。
プロセッサの配線層上へメモリ混載が可能に
東京大学生産技術研究所の小林正治准教授らは2021年6月1日、神戸製鋼所
およびコベルコ科研と共同で、Snを添加したIGZO材料(IGZTO)を用いた
3次元集積メモリデバイスを開発、動作実証に成功したと発表した。
プロセッサの配線層上に大容量メモリを混載することが可能になる。
IGZTOは、神戸製鋼所および、コベルコ科研がフラットパネルディスプレイ向けに
開発した高移動度の酸化物半導体材料である。
今回は、厚みが8nmと極めて薄いIGZTOチャネルと、誘電率が高い
HfO2ゲート絶縁膜を用い、トランジスタを試作した。
トランジスタの移動度は、従来のIGZO材料に比べて2倍以上も
高い約20cm2/Vsを達成したという。
第一原理計算を用い、高い移動度を実現できた起源について調べた。
この結果、Snを添加したことにより、アモルファス構造でも伝導電子が
感じるポテンシャルの揺らぎが小さくなったためだと分かった。
さらに今回、HfO2材料でもIGZTOをキャップ材料とすることで、
400℃以下の温度で強誘電性を発現させることができた。
IGZTOの熱膨張係数が小さく、HfO2材料の結晶化アニール中に、強誘電相形成を
促すプロセスひずみが印加されたため、と分析している。
さらに、IGZTOとHfO2は共に酸化物材料であり、界面に欠陥や酸素空孔が生じにくく、
書き換えを繰り返すごとに特性が変動する「wakeup現象」もなかったという。
小林氏らが開発しているHfO2材料はこれまで、500℃以下で
強誘電性を発現させることが困難だったという。
しかも、金属電極と強誘電体HfO2の間には欠陥や酸素空孔が形成されやすいなど、
いくつかの課題もあったが、今回の研究でこれらを解決した。
研究チームは、IGZTOを用いたFETとHfO2キャパシターを集積したメモリデバイスを試作し、
書き込みや読み出しの動作を検証した。
これにより、トランジスタのゲート電圧を大きくすればトランジスタの駆動力が上がり、
メモリ動作が早くなることを確認した。
キャパシターの面積を小さくすることで充放電する電荷量を小さくし、
メモリ動作が早くなることも確認した。
動作シミュレーションを用いて、「ナノ秒」単位で動作することを確認できたという。